Connie Sue Highway
アウトバックのオフロード 。この赤砂の道を旅するとは、いかに過酷で魅力的か。

破線が気になってしまうタイプ?

日本の登山用エリアマップを例に挙げると分かりやすいかもしれない。

「実線より破線ルートが気になる」
「破線だと、なんか魅力的で行ってみたくなる」

あなたはそんなタイプだろうか。

破線は「難ルート」を示しているが、
だからこそおもしろい登山ができそうだと感じる人種は確かにいる。

登山用の地図だけではなく、
一般の道路地図にも、実線で太く引かれている主要道と細い線、
さらには破線と、違った表現をされていることは案外多い。

とくに破線を見つけると、そこがたやすくは旅できない、
何だか実に魅力的なところに思えてこないだろうか。

オーストラリアのアウトバックの旅は、困難な旅に浪漫を感じる人種には非常に魅力的だ。

困難とは、自然環境の厳しさを意味する場合が多い。
困難さが大きいほど、映る景色は美しい。
感動はその振り幅に比例する

同じ日の出でも、あなたがいつもの通勤路から見る日の出と、
歩いて登った富士山の山頂から見るご来光はどちらが美しいと感じるだろうか。

破線好きの人は、
難ルートに行けばそれに見合った景色に出会えることを、
直観的かつ体験的に知っているのだ。

 

破線の宝庫、アウトバックトップ25ルート

先日、内陸砂漠のオフロードを自力で旅するための地図を紹介した
(「今、そこにある冒険をオーストラリアで実現する」)が、
なんとアウトバック全体の魅力的なオフロード・ルート(トラック)を取り上げた大判のガイドブックが作られている。

【グレート・デザート・トラック・アトラス&ガイド Great Desert Tracks Atlas & Guide】

ページを開くと、そこは「難ルート」好きにはたまらない、破線の宝庫だ。

普通の破線、さらには細い破線まであるのを見つけるに至っては、
もういてもたってもいられなくなる。

このガイドブックは、つまり破線ばかりを詳しく解説しているのだ。

とりあげられているルート数は25本。アルファベット順で掲載している。

bp-aus2 Anne Beadell Highway
Binns Track
Birdsville track
Canning Stock Route
Connie Sue Highway
Finke River Gorge
Gary Highway
Gary Junction Road
Goods Track
Great Central Road
Gunbarrel Highway
Hay River Track
Innamincka
Old Ghan Railway Loop
Oodnadatta Track
Plenty Highway
Rudall River (Karlamilyi) NP
Sandover Highway
Sandy Blight Junction Road
Simpson Desert
Strzelecki Track
Sturt National Park
Talawana Track
Tanami Track
West MacDonnell Ranges to Uluru

「Highway」が幾つか含まれているが、間違ってもこれは高速道路のたぐいではない。

あなたがもし舗装路だけでもアウトバックを旅した経験のあるなら、
耳にしたことのあるルート名も含まれているかもしれない。

これらは全て一筋縄ではいかない旅ルートで、
一般的な旅行をしていては決して見ることのできない景色に出会える場所だ。

この中でも最も厳しいとされるCanning Stock Route (CSR)のページを見てみよう。

 

CSRの過酷さと魅力を読み取る

トラックの総距離は1619㎞で、うち無補給(ガソリン)最長距離977㎞とある。

適期は5月~9月の冬にあたる期間とされ、夏は危機的に暑くなる恐れがあるという。

登山の世界では、
あえて気候の厳しい冬に登る「冬期」という条件付けのスタイルがあるが、
ここを厳夏に挑むのは冬期登山以上に現実離れしているようだ。

ヒマラヤ登山や、入域規制のあるトレイルと同じように、
実はここも有料のパーミット(許可)を事前に取得する必要がある。

アボリジニの保護地及び私有地を通過するための制度という名目だが、
実際は入域者のリスク管理の役割も果たしているだろう。

つまり過去の通過者の記録も残されているということだ。

許可制から喚起されるのは、
限られた者にしか経験できない稀少性の高い旅ができそうだということ。

同時に非常にタフな旅になりそうなことが簡単に想像できる。

地図には井戸の場所(GPS数値)とキャンプ適地、
区間距離などの情報がこと細かに記載され、
それを辿ってゆくと、中間地点で「Lake Disappointment」という湖に行きあたる。

そこにはこう書かれている。

「1897年、フランク・ハンによって名付けられた湖。そこに一滴の水も見つけられず失望させられたことから」

訳すとするなら「失意の湖」といったところか。

19世紀末の探検家がいかに渇きに悩まされたかを想像しただけで喉が渇いてくる。

ここを4WDで旅するにしても「2~3週間の期間を要する」とされている。

オーストラリアの自然を体感するという、
謳い文句だけの単なる旅行と考えてはいけない。

もはや遠征登山という意味でも使われる「エクスペディション」として捉える方がいい。

ロード・コンディションや、飲用水についてなど、
実用的な情報ももちろん書かれていて、
良質の紀行番組を見たりスポーツ観戦をしているような臨場感がある。

このガイドブックはこうしたルートの記述がなんと25本も掲載されている。

そのコンテンツの濃さを味わい過ぎると、間違いなくゲップが出る。

これら詳細な情報は、驚くべきことに、
調査チームが実走して収集しているという。

いったいどれだけのエクスペディションを行ったというのだろう。

それが、この一冊に詰め込まれていると考えると、
対価としては果たして彼らは報われているのだろうか。

旅の手段として4WDの使用が前提となっているが、
より挑戦的にバイクでのエクスペディションも可能に思える。

さらには自転車での旅もルートによっては実現できるかもしれない。

それだけのヒントがこの一冊にある。

Great Desert Tracks Atlas & Guide【グレート・デザート・トラック・アトラス&ガイド Great Desert Tracks Atlas & Guide】

JANコード : 9781895006222

ISBNコード : 978-1-86500-622-2